Japanische Klassiker mit Furigana
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ようきょくこくびゃくだん
謡曲黒白談
夢野 久作
Lesen Sie 謡曲黒白談 (ようきょくこくびゃくだん) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.288 Zeichen · 9 Bildschirme
例えばこういう風に直ぐにも始めそうに身構えをして、相手の顔をグッと睨む。ここが危機一髪、相互の生死の分れるところで、折角の深い交際が疎かになったり、恩義ある人に悪感を抱かせたり、又は大切の得意を失策ったりして、後悔臍を噬む共及ばぬような大事件が出来するその最初の一刹那なのである。もしそれ掣電の機前に虎を捕え得る底の名外交家ならばいざ知らず、大抵の相手ならばここで大切な用事を思い出したり、天気が怪しくなったり、少く共いずれ又その中にという言葉を抵当にして、多少先方の心田に不満の種を蒔いて帰るか、然らずんば先方に機先を制せられて、人間離れのした声で上は天堂下は地獄まで引きずりまわされて、散々に神経系統を攪乱されて、小便にも行けずに這々の体で逃げ帰るのが落ちである。
自分は熟々案じて見るに、こんな連中があとで極端な謡い嫌いになって、到る処この時の経験を吹聴してまわるから、世上に比較的謡曲嫌いが多く、下手謡曲家に捕まるのと鼈に喰い付かれるのとを同じ位の悪感を以て迎え、謡曲好きの近所に住むのと高架線のガードの下に住まうのとを混同して考えるような事になったのではあるまいかと思う。