Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ようきょくこくびゃくだん

謡曲黒白談

夢野 久作

Lesen Sie 謡曲黒白談 (ようきょくこくびゃくだん) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.288 Zeichen · 9 Bildschirme

Aozora Bunko

「ああ、久し振りで面白かった。死んだ爺さんが生きて御座ったらなあ……。今一つ聞かせて」

と云った。拙者はこの言葉を聞いて正直のところ涙が出そうであった。自分が謡曲を始めてから今日までこれ位に感動を他人に与えた事はないので、全く自他の本懐といい祖母への孝養といい申し分のない大成功であった。ところが扨、

「今度は何を謡いましょう」

と尋ねて見ると、祖母は又もや涙を拭いながら、

「お前はあの富士太鼓を知っていなさるかの」

と云った。自分は聊か驚いて、

「今うたいましたよ、それは」

「何をば」

「その富士太鼓をです」

「ああ、その富士太鼓富士太鼓。妾はようよう思い出した。死んだ爺さんはそれが大好きで、毎日毎日謡い御座った。あれを一ツ」

これには自分も全くうんざりして終った。真逆祖母の記憶力がここまで消耗していようとは夢にも思わなかったが、併し謡わないよりは増しだと思って又一番相勤めた。けれ共その終い際になったら、もともと厭気がさしている上に疲れているものだから、声が甲に釣り上ってヘトヘトになってすっかり汗を掻いてしまった。そうしてやっと謡って仕舞うと、祖母は又もや涙を拭いながら、