Japanische Klassiker mit Furigana
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あかいらくだ
赤い駱駝
梅崎 春生
Lesen Sie 赤い駱駝 (あかいらくだ) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.820 Zeichen · 24 Bildschirme
「わかったぞ。おい。わかったぞ」
おれの顔を見るなり、二見がそう言った。語調はしっかりして乱れている風はなかった。
「何がわかったんだい」
しかし二見は返答しないで、とつぜん立ち上ると、胸を反らせて部屋のなかを歩きだした。頬になにか気味わるい笑いの影をうかべているようだった。そしておれにあいさつもせず、ふいに出口から通路の方に出て行った。追っかけようとしておれは踏みとどまった。そして心配そうな顔をしている若い従兵をつかまえて、いろいろ様子を聞いた。
それによると、二見はあの終戦の夜、頭をかかえて椅子にかけたり、部屋をぐるぐる歩き廻ったりして、一睡もしなかったということだった。その翌日から、すこし変だと思ったら、突然にこにこと笑いだしたり、分配の物資をもって行っても、相手にせず、部屋にいるかと思うと、もう通路の方に出て行くという風らしかった。話をきくまでもなく、ある錯乱が二見の上におちているのは明瞭だった。何か変ったことが起きたら知らせに来い、と言いおいて、おれは士官室に戻ってきた。一時的なものだろうと思ったが、それにしても暗い影がおれの心にさした。