Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えちごのふゆ

越後の冬

小川 未明

Lesen Sie 越後の冬 (えちごのふゆ) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.272 Zeichen · 15 Bildschirme

Aozora Bunko

」

村端に一軒の桶屋があった。よく母が町への出入りにこの家へ立寄るのである。いつしかその桶屋の前へ来た。五つ許の頭に腫物の出来た子が立っていた。家の前に一本の柳の木があって、子供の汚物を洗ったのが、その柳の木から壁板に繋がれた縄に掛けてあった。家は藁屋で、店には割りかけた赤味の板が散ばっていた。けれど別に人の来ている様子はなかった。

太吉は外で、こう声をかけた。

「今日は!」

「おーい。」「太吉かー。」

「お母今日寄らしたかい。」

「いんや、寄らしゃらんぞ。町へ行かしたけい。」

「まだ帰えらしゃらんから迎いに行くだ。」

「まだ帰えらしゃらんちゅうだか。」

「何方へ行かしただろうのう。」

「己あ知らんが直江津だんべえのう。」

と桶屋の女房が家の内で答えた。

太吉は直江津へ向った。

厚く重なり合った雲の断目から、飴色の弱い日が洩れた。畦の並木の片側が薄く照り映えた。田の中には氷が張って、処々に雪が消えずに残っている。街道を行くと、旅人の影がちらちら見られた。電信柱は遠くまでつづいた。折々冬木立に風が当って、枝が鳴るかと思うと頭の上の電線が呻った。彼方に沙山が見える。急いで来ると、やがて沙山へ着いた。