Japanische Klassiker mit Furigana
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えちごのふゆ
越後の冬
小川 未明
Lesen Sie 越後の冬 (えちごのふゆ) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.272 Zeichen · 15 Bildschirme
皆なはつくねんとしてこれを聞いている。家の外には雪がちらちらと降って、前の小川の水は独り寂寞を破って囁いて流れている他、村の端に廻っている水車の音が静かな林や、田の中を通って其処まで聞えて来る。けれど家の中にいるものの耳には、この小川の囁きも水車の音も聞えない。ただ、歌い手の歌の声に聞き惚ているばかりだ。或者は懐手の儘聞いている。或者は頬被りをした儘聞いている。或者は火に手を翳したまま、燻る煙に眼を瞬いている。さもなくば酒を温めながらこれに合槌を打って陽気にするばかりだ。実に北国の冬は、笛を吹くか、歌を歌うか、酒を飲んで女に悪戯か、而して其等の遊び方が原始的で、其処に言い知れぬ哀れがある。是等の笛の音も、歌の声も、寒い、澄み渡った空気に透通って、一層木精に冴える思いがした。
ヒューと梢に当る風の音がして、ガタガタと窓から吹き込んで障子に当った。遽に天気が狂ったのである。太吉は外を眺めて崖端に立っている一本の榛の木の頂に目を止めていた。
秋の頃、黄色い粉を吐いた花の乾固った死骸や、小さく黒く見える実や、それも僅かに彼方の枝に二つ、此方の枝に一つある位で他に一片の葉の影も止めていなかった。