Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅみのいでん
趣味の遺伝
Lesen Sie 趣味の遺伝 (しゅみのいでん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.235 Zeichen · 77 Bildschirme
こんな時には余の性分としていつでも損をする。寄席がはねて木戸を出る時、待ち合せて電車に乗る時、人込みに切符を買う時、何でも多人数競争の折には大抵最後に取り残される、この場合にも先例に洩れず首尾よく人後に落ちた。しかも普通の落ち方ではない。遥かこなたの人後だから心細い。葬式の赤飯に手を出し損った時なら何とも思わないが、帝国の運命を決する活動力の断片を見損うのは残念である。どうにかして見てやりたい。広場を包む万歳の声はこの時四方から大濤の岸に崩れるような勢で余の鼓膜に響き渡った。もうたまらない。どうしても見なければならん。
ふと思いついた事がある。去年の春麻布のさる町を通行したら高い練塀のある広い屋敷の内で何か多人数打ち寄って遊んででもいるのか面白そうに笑う声が聞えた。余はこの時どう云う腹工合かちょっとこの邸内を覗いて見たくなった。全く腹工合のせいに相違ない。腹工合でなければ、そんな馬鹿気た了見の起る訳がない。源因はとにかく、見たいものは見たいので源因のいかんに因って変化出没する訳には行かぬ。しかし今云う通り高い土塀の向う側で笑っているのだから壁に穴のあいておらぬ限りはとうてい思い通り志望を満足する事は何人の手際でも出来かねる。