Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅみのいでん
趣味の遺伝
Lesen Sie 趣味の遺伝 (しゅみのいでん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.235 Zeichen · 77 Bildschirme
がその人の顔は? ああ寂光院だと気が着いた頃はもう五六間先へ行っている。ここだ下品になるのはここだ。何でも構わんから追い懸けろと、下駄の歯をそちらに向けたが、徒歩で車のあとを追い懸けるのは余り下品すぎる。気狂でなくってはそんな馬鹿な事をするものはない。車、車、車はおらんかなと四方を見廻したが生憎一輌もおらん。そのうちに寂光院は姿も見えないくらい遥かあなたに馳け抜ける。もう駄目だ。気狂と思われるまで下品にならなければ世の中は成功せんものかなと惘然として西片町へ帰って来た。
とりあえず、書斎に立て籠って懐中から例の手帳を出したが、何分夕景ではっきりせん。実は途上でもあちこちと拾い読みに読んで来たのだが、鉛筆でなぐりがきに書いたものだから明るい所でも容易に分らない。ランプを点ける。下女が御飯はと云って来たから、めしは後で食うと追い返す。さて一頁から順々に見て行くと皆陣中の出来事のみである。しかも倥偬の際に分陰を偸んで記しつけたものと見えて大概の事は一句二句で弁じている。「風、坑道内にて食事。握り飯二個。泥まぶれ」と云うのがある。「夜来風邪の気味、発熱。