Japanische Klassiker mit Furigana
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おどるちへいせん
踊る地平線(上)
谷 譲次
Lesen Sie 踊る地平線(上) (おどるちへいせん) von 谷 譲次 (たにじょうじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 168.926 Zeichen · 332 Bildschirme
でよもや日本語をぶつけられようとは思うまい――と、何よりもその声の主なる一人物の風体相貌とであった。
と言ったところで、べつに異様ないでたちをしていたわけじゃない。異様どころか、じろりと出来るだけ陰惨な一瞥をくれてこの「やあ!」の出所を究明した私の眼に朦朧と――紫煙をとおして――うつったのは、何のへんてつもない、薄よごれた服装の日本のお爺さんだったが、それがにこにこしながら自分の酒杯ひとつ持って私の食卓へ移ってきたのを見ると、私だって相当苦労を積んでるから三下か親分かくらいは一眼で識別出来る。その、先生ばくちの貸元みたいに小柄なくせにでっぷり肥った巴里無宿のアンリ・アラキ老――これは間もなく名乗りを聞いてわかったんだが――の身辺には、「七つの海」の潮の香がすっかり染みこんで、酸も甘味も舐めつくしたと言ったような、一種の当りのいい人なつこさが溢れ、そしてその黒い細い眼の底に、若えの、ついぞ見ねえ面だが、近頃めりけんからでも渡んなすったかね? といいたげな、いかさま大胆沈着・傍若無人の不敵な空気が、世慣れたこなしとともにうっそりと漂っているんだから、瞬間にして、私は思った。