Japanische Klassiker mit Furigana
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とじょう
途上
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 途上 (とじょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.060 Zeichen · 32 Bildschirme
いらっしゃらなかったにも拘らず、それを口実にして前の方へお乗せになった、―――ここに一つの矛盾があります。そうしてもう一つの矛盾は、最初勘定に入れておいた衝突の危険の方は、その時になって全く閑却されてしまったことです。乗合自動車の一番前の方へ乗る、―――衝突の場合を考えたら、このくらい危険なことはないでしょう、其処に席を占めた人は、その危険に対して結局択ばれた一人になる訳です。だから御覧なさい、あの時怪我をしたのは奥様だけだったじゃありませんか、あんな、ほんのちょっとした衝突でも、外のお客は無事だったのに奥様だけは擦り傷をなすった。あれがもっとひどい衝突だったら、外のお客が擦り傷をして奥様だけが重傷を負います。更にひどかった場合には、外のお客が重傷を負って奥様だけが命を取られます。―――衝突と云うことは、おっしゃるまでもなく偶然に違いありません。しかしその偶然が起った場合に、怪我をすると云うことは、奥様の場合には偶然でなく必然です」
二人は京橋を渡った、が、紳士も湯河も、自分たちが今何処を歩いているかをまるで忘れてしまったかのように、一人は熱心に語りつつ一人は黙って耳を傾けつつ真直ぐに歩いて行った。