Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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とんそう

遁走

葛西 善蔵

Lesen Sie 遁走 (とんそう) von 葛西 善蔵 (かさいぜんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.581 Zeichen · 23 Bildschirme

Aozora Bunko

私は、原口のように「それでは僕も明日の晩は失敬するからね」と思いきりよく挨拶して帰りえないで、ぐずぐずと、彼と晩飯前の散歩に出た。その間も、一言も彼の口から「会費ができたかね?」といったような言葉が出ない。つまり、てんで、私の出席するしないが、彼には問題ではないらしい。

いったい今度の会は、最初から出版記念とか何とかいった文壇的なものにするということが主意ではなかったので、ほんの彼の親しい友人だけが寄って、とにかくに彼のこのたびの労作に対して祝意を表そうではないかという話からできたものなのだ。それがいつか彼の口から出版屋の方へ伝わり、出版屋の方でも賛成ということで、葉書の印刷とか会場とかいうような事務の方を出版屋の方でやってくれることになったのだ。だからむろん原口や私の名も、そのうちにはいっていなければならぬはずだ。それを勝手に出版屋の方で削除するというのはいささか無法のことでもあり、またそれが世間当然のことだとしても、もっぱらその交渉の任に当っている笹川に、今までにその事が全然分らずにいるというのがおかしい。……彼はいわゆる作家風々主義で、万事がお他人任せといった顔はしているけれど、事実はそうなのだから。