Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
豊島 与志雄
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.402 Zeichen · 19 Bildschirme
床に流れたウイスキーを、山崎は、手でしゃくって飲むまねをしました。
「おい誰か、ワンワンと吠えてみないか。そしたら僕が、犬のまねをしてこの酒をなめてみせる。」
「御婦人連にその合唱を頼もう。」と誰かが言いました。
笑い声が起りました。
ところが、一陣の冷りとした気配が流れました。――照子は黒革のハンドバックを取って、編輯局長といういかめしい肩書のある尾高の方へ、真直にやって行きました。
「粗相をしました。弁償致します。」
百円札を五枚、彼女は卓上に置きました。
尾高は呆気にとられて、贅肉の多い頬をもぐもぐさせながら呟きました。
「そんなこと……いいんですよ。いったい、どうしたというんですか……。困りますねえ……。どうせ、酔っ払った者が壊しますよ。まったく困りますよ。」
「いいえ、責任を果させて頂きます。」
「責任……何の責任ですか。」
「弁償致さなければ、責任が果せません。」
彼女の調子には抗弁し難いものがありました。それでも、それは理解しにくい変梃な事柄でした。更に言えば、不愉快な色合のものでもありました。ちょっとの間、誰もみな口を噤んでしまいました。とはいえ、これをはっきり見聞きしたのは、尾高の近くにいた者だけで、遠くの者はただなにか変梃な冷りとする気配を感じただけでした。