Japanische Klassiker mit Furigana
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どうかんやま
道灌山
宮本 百合子
Lesen Sie 道灌山 (どうかんやま) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.015 Zeichen · 16 Bildschirme
。肩よりも高くしげっている草の間を息せききってかけて来て、惰力で、まだ幾分駈け気味に段々とまりかけたとき、唇を開き息をはずまし、遠くまで逃げ終せたうれしさでこっそり笑っている女の子のわたしの前に、いきなり、ひょっこり蓬々と髪をのばした男の、黒いよごれた大きな顔があらわれた。顔だけ出たのではなく、びっくり箱のふたがあいたように、蓬々の頭と大きい黒い顔と、ぼろをまとった半分むきだしの肩とが、いちどに、にゅっと深い草の中から現われた。わたしがとまった地点のさきは、草にかくれて見えなかったが、ゆるい凹地になっているらしかった。乞食! と思ったその男は、その凹みの草のなかに臥てでもいたのだったろう。
にょっきり草から半身を現した黒い大きいきたない顔は、ものも云わず笑いもせず、わたしを睨むように見た。私も、二間ばかり離れたこっちから目を据えてその男を見守っている。どっちも動かない。すると、ピクッと、ぼろの間から出た男の裸の肩が動いた。途端に、わたしは全速力でみんなのいる方へ逃げだした。何とも云えず、こわかった。うしろを見るのもこわく、しかし見ないとなおこわくて、ちょいちょいふりかえりながら逃げて、もうつかまっている弟や大人の女のいるところまで辿りついた。