Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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とおのへ

遠野へ

水野 葉舟

Lesen Sie 遠野へ (とおのへ) von 水野 葉舟 (みずのようしゅう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 55.903 Zeichen · 117 Bildschirme

Aozora Bunko

遠野へ

一

「いま、これから東の方に向って、この花巻を発つ。目的地の遠野に着くには、今夜、夜が少し更けてからだそうだ。」――この頃は、もう少しずつ雪が解けはじめたので、途中が非常な悪路だと聞いた。私は今日の道の困難なことを想像しながら、右の文句をはがきに書いた。私はこんどその遠野に帰っている友人に会うために、東京を出て来たのである。

ところへ、宿の女がはいって来て、馬車がくる頃だから用意をしろという。私は急いで、そのはがきに午前九時十分と時間を書き入れた。それを留守宅の宛名にして、それから、ほかの一枚にも同じ文句を書いて、来る路に仙台で世話になった家に宛てた。

手ばしこく洋服を着た。宿屋の勘定は前にすましてあったから、用意ができると玄関に出て行った。宿のものに送られて、靴を穿きながら空を見ると、つめたい、灰色の煙が立ち籠ったような空の色だ。

「これが、北国空か……」と思いながら、寒さと寂しさとがからだに沁みて来るようなので、私は堅く唇をむすんだ。

宿屋を出て、町の街道にくると、出たところに白い布の垂幕をおろした、小さな箱形の馬車が二台並んでいた。

昨日、日の入るころ着いた時には、雪が解けて、この町には濁った水が流れていた。