Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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とおのへ

遠野へ

水野 葉舟

Lesen Sie 遠野へ (とおのへ) von 水野 葉舟 (みずのようしゅう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 55.903 Zeichen · 117 Bildschirme

Aozora Bunko

北国の人

一

九月の中ごろ、ひどく雨が降った或る晩のこと。――学校を出た間もなくこれから新聞社にでも入る運動をしようと思ってる時に少し思うことがあって、私は親の家から出て、佐内坂上の下宿屋に下宿して間もなくであったが、――ちょうど九時打った頃、その某館に、どしゃ降りの最中によそから帰って来た。

自分の室にはいって、散滴でじめじめしている衣服を脱いでいると、そこへここの娘のお八重が湯を持って入って来た。茶を入れてくれたり、濡れた衣服を衣紋架に通して、壁のところにかけたりして、室を片付けていたが、急に思いついたように、

「ああ、そうそう、下の荻原さんが貴方にお目にかかりたいって。」と言う。

「荻原ってどんな人だ?……おれに何の用があるだろう。」

「何の用ですか? この間からそう言ってらしたから。今夜なんぞ丁度いいわ。いらっしゃいって、そう言って来ましょうね。……それは変んな言葉つきよ。私なんぞには何言ってらっしゃるんだか、半分ぐらいしかわからないの。」

たてつづけにしゃべって、獨りで呑み込んだ顔をして下に降りて行った。

ちょっと不思議な気もしたが、そのまま待っていると、やがて、入口の唐紙を開けて、鴨居に首がつかえそうな大きな男がぬうっと入って来た。