Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅうぶん
醜聞
山本 周五郎
Lesen Sie 醜聞 (しゅうぶん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.900 Zeichen · 46 Bildschirme
一
一
苅田壮平はなめらかに話した。それはちょうど、絵師が自分の得意な絵を描くのに似ていた。どの線もどの点も、またぼかしの部分や着彩の順にも、いささかの誤りもためらいもなく、すらすらと描きあげてゆくのを見るようであった。
楯岡のときと同じだな、と功刀功兵衛は思った。楯岡平助のときと殆んど同じだと、――裏のほうで仔猫のなく声がし、窓外の庇に枯葉の散りかかる音が聞えた。
「いや、私にはできません」と功兵衛はかすかに首を振った、「それは不可能だというほかはありません」
苅田は冷えてしまった茶を啜り、菓子鉢から栗饅頭を取って喰べた。
「ほう」苅田は好ましそうに微笑した、「これは寿栄堂の栗饅頭ですな、わたしはまたこれがなによりの好物でしてね、あの店はおやじと娘の二人でやっているんだが、娘はもう二十八九にもなるでしょうかな、おやじの栄吉があの娘を可愛くって手放せない、娘はあのとおりのきりょうよしだから、縁談は掃いて捨てるほどあるんだが、おやじがうんといわないためいまだに白歯のまんまです」
いつもの癖だ、と功兵衛は思った。都合がわるいとみると巧みに話をそらす。これまではもっと巧みだったが、いまではもう薹が立ってしまった。