Japanische Klassiker mit Furigana
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じゅうべえさんのいっか
重兵衛さんの一家
寺田 寅彦
Lesen Sie 重兵衛さんの一家 (じゅうべえさんのいっか) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.089 Zeichen · 14 Bildschirme
重兵衛さんの家は維新前にはちゃんとした店をもった商人であったらしいが、自分の近づきになった頃はいわゆる「仲持」すなわち、今の土地家屋売買周旋業と云ったような商売で、口と足とさえ働かしておれば自然に懐中に金の這入って来る種類の職業であったらしい。五十近いでっぷり肥った赤ら顔でいつも脂ぎって光っていたが、今考えてみるとなかなか頭の善さそうな眼付きをしていた。夏の暑い盛りだと下帯一つの丸裸で晩酌の膳の前にあぐらをかいて、渋団扇で蚊を追いながら実にうまそうに杯をなめては子供等を相手にして色々の話をするのが楽しみであったらしい。松魚の刺身のつまに生のにんにくをかりかり齧じっているのを見て驚歎した自分は、自宅や親類の人達がどうしてにんにくを喰わないかと思って母に聞いたら、あれを食うと便所が臭くなるからいけないと云うことであった。重兵衛さんの家では差支えのない事が自分達の家ではいけないのは、どういう訳だかと不思議に思われた。そう云う種類の事がいろいろあった。その中の一つがこのにんにくの問題であったのである。そのせいでもあるか、重兵衛さんが真白な歯の間へ真白なにんにくの一片をくわえて、かりかりと噛み切る光景が鮮明なクローズアップとなって想い出される。