Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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じゅうきちひょうりゅうきぶん

重吉漂流紀聞

久生 十蘭

Lesen Sie 重吉漂流紀聞 (じゅうきちひょうりゅうきぶん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.456 Zeichen · 52 Bildschirme

Aozora Bunko

「まァそれは待て。万一、風が変って南へ流されるようなことにでもなれば、その辺にあるのはみな切立った岩山の島ばかりだ。水主水夫といっても、犬掻き泳ぎもできないのが大概だから、端舟がないと、島にとりつくこともできない。端舟一隻のあるなしが、生き死にの分れ目。要吉の思いを晴らしてやるのもいいが、なんといっても、生きている十三人の命のほうが大切。早まったことをすると、あとで後悔の臍を噛むようなことができる」

と説いて聞かせたが、三郎助は両手で耳をふさいで受けつけようともしない。もともと伊豆者と尾張者は気性が合わないところへ、尾張方は一向宗、伊豆方は日蓮宗で宗旨までちがう。こじれだしたらおさめようのないことを知っているので、ずいぶん下手に出てなだめたが、どうしてもきかない。

「田子村の、柿崎の、それから丑蔵も福松も、いま船頭の言うたをなんと聞いた。われらはどうせ淦水汲みだから、海に落ちて死ぬことは厭わないが、端舟を捨てて、懇ろに弔ってくれると思えばこそ諦めもする。船頭がこういう了見では、この先、海へ落ちても見捨てられるにきまった。おぬしらどう思うか。それでもいいのか、情けないとは思わないのか」