Japanische Klassiker mit Furigana
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やこ
野狐
田中 英光
Lesen Sie 野狐 (やこ) von 田中 英光 (たなかひでみつ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.615 Zeichen · 39 Bildschirme
私は帰ってきた蕩児として、前以上に桂子が好きだった。彼女のためなら、自分の文学も、自分の一生も、不憫な子供たちも、いっさい、失ってもよいとまで思いつめていた。しかし、前回と違い、桂子の物欲の強くなっているのにはかなり悩まされた。彼女は再び私と一緒になることを喜んで承知したが、その代り、
「わたし、お店に出て、いろんなことを覚えたわ、愛情は物質と平行するものよ、わたし、着物も欲しいし、うんと贅沢させてくれなくてはイヤ、ネ、女の虚栄というものを理解して頂戴」
ああ、これが私との逢いはじめに、私が、ボロボロのジャンパーに軍靴をはき、「ぼくは身なりをあまりかまわない男ですよ。それに貧乏作家で、あなたに贅沢をさせられないかもしれない」といったのに対し、やさしく、「ええ、あなたの愛情さえあれば、わたし、なんにもいらない」と答えた女なのだろうか。
一カ月の社交喫茶勤めという悪習が、桂子を急速に堕落させたのだろうか。イヤ、元来彼女はそうした虚栄心の芽のあった女ではある。それが私に対しては慎ましく、「なにを買ってくれ」というのも遠慮していたのが、私には余計、可憐に思われたのである。