Japanische Klassiker mit Furigana
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かわぐちこ
野菊の墓他六篇
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓他六篇 (かわぐちこ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.105 Zeichen · 61 Bildschirme
惨として死のにおいが満ちた室にはいって、すでに幽明隔たりある人に会うた。胸部のあたりには、生の名残りの温気がまだ消えないらしい。
平生赤みかかった艶のよい人であったが、全血液を失うてしもうたものか、蒼黄色に変じた顔は、ほとんどその人のようでなかった。嫂はもうとてもむつかしいと見えたとき、
「わたしもこれで死んでしまってはつまらない……」
と、いったそうである。若くして死ぬ人の心は多くその一語に帰すのであろう。平凡な言葉にかえって無限の恨みがこもっている。きのうの日暮れまで働いていた人が、その夜の明け明けにもはや命が消える。多くの子どもや長年添うた夫を明るい世にのこし、両親が会いにくるにも間に合わないで永久の暗に沈まんとする、最後を嘆く暇もない。
「これで死んでしまってはつまらない」
もがく力も乏しい最後の哀音、聞いたほどの人の耳には生涯消えまじくしみとおった。自分は妻とともにひとまず家に帰って、ただわけもわからずため息をはくのであった。思わず妻の顔子どもたちの顔を見まわした。まさか不意にだれかが死ぬというようなことがありゃせまいなと思われたのである。