Japanische Klassiker mit Furigana
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かわぐちこ
野菊の墓他六篇
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓他六篇 (かわぐちこ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.105 Zeichen · 61 Bildschirme
姉夫婦はたしか六十に近いだろう、家のさびしくなったも無理はない。予はけっしていやな心持ちはせぬけれど、両親もずいぶん達者なほうだったし、姉夫婦は働き盛りで予らの家におったころには、この大きな家もどよむばかりであったのだ。それにくらべると今のわが家は雪にとじこもった冬の心持ちがする。兄は依然として大酒を飲み、のっそりぽんとした顔をして、いつも変わらずそれほどに年寄りじみないが、姉のおとろえようは驚くばかり、まるでしわくちゃな老婆になってしまってる。
予はしばらく背を柱に寄せて考えるともなく、種々に思いが動く。姉の老衰を見るにつけ、自然みずからをかえりみると、心細さがひしひしと身に迫りくる。
「わたしが十六の年にこの家へ来たその秋にお前が生まれた。それで赤ん坊のときから手にかけたせいか、兄弟の中でも、お前がいちばんなつかしい」
姉はいつでもそういって予に物語った。その姉がもはやあのとおり年寄りになったのに、この一月までも達者でおられた父さえ今は永劫にいなくなられた。こう思いくると予はにわかに取り残されものになったかのごとく、いやにわが身のさびしみをおぼえる。