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Japanische Klassiker mit Furigana

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かわぐちこ

野菊の墓他六篇

伊藤 左千夫

Lesen Sie 野菊の墓他六篇 (かわぐちこ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.105 Zeichen · 61 Bildschirme

Aozora Bunko

岡の東端ひときわ木立の深いあたりに、朱塗りの不動堂がほんのりその木立の上に浮きだしている。子どもたちはいつのまか遠く予を置いて、蝗を追ってるらしく、畔豆の間に紅黄のりぼんをひらつかせつつ走ってる。予は実にこの光景に酔った。

むかし家におったころに毎日出あるいた田んぼ道、朝に晩にながめたこの景色、おもむきは昔の記憶に少しも変わらないが、あまたの子持ちとなった今のわが目には特別な意味を感ぜぬわけにゆかぬ。昔日のことが夢でなくて、今の現在がかえって夢のように思われてならない。老いさらぼいた姉、ぽうんとした兄、暗寂たる家のようす。それから稲の葉ずえに露の玉を見る、静かに美しい入り日のさまは、どうしても、今の現在が夢としか思われない。

ものさびしいうちに一種の興味を感じつつもその愉快な感じのうちには、何となしはかなく悲しく、わが生の煙にひとしき何もかも夢という思念が、潮と漲ぎりくるを感ずるのである。

ぼんやり立ちつくした予は足もとの暗くなったのもおぼえなかった。

「お父さん、もう帰ろうよお父さん」

とふたりの子に呼び立てられ、はじめてわれに帰った。裏口より竈屋のほうへまわると兄は鯰を料理していた。