Japanische Klassiker mit Furigana
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かわぐちこ
野菊の墓他六篇
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓他六篇 (かわぐちこ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.105 Zeichen · 61 Bildschirme
予はよほど神経疲労したものか、兄が鯰を切ってそのうす赤い血を洗ってる光景までがどうしても現実とは思えない。ふたたび子どもにうながされてようやく座敷へ上がる。姉はばさばさ掃き立てている。洋燈が煌々として昼のうす暗かった反対に気持ちがよい。
この夜も姉は予と枕をならべて寝る。姉は予がくるたびにいつでもそうであるのだ。田畑のできばえのことから近隣村内のできごとや、親類のいざこざまで、おもしろかったこと、つまらなかったこと、いまいましくて残念であったことなどのいっさいを予に話して聞かせる。予がそれ相当な考えをいうて相手になるものから、姉はそれがひじょうに楽しみらしい。姉はおもしろかったことも予に話せばいっそうおもしろく、残念な口惜しいことなどは、予に話せばそれでおおいに気分がよくなるのだ。極端にのん気な酒飲みな夫をもった姉は、つねにしんみりした話に飢えている。予はずいぶんそのらちもなき話に閉口するときがあるけれど、生まれるとから手にかけた予をなつかしがっていると思うてはいつでもその気で相手になる。姉も年をとったなと思うと気の毒な思いが先で、予は自分をむなしくして姉に満足を与える気になる。