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Japanische Klassiker mit Furigana

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ななこ

野菊の墓

伊藤 左千夫

Lesen Sie 野菊の墓 (ななこ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.271 Zeichen · 144 Bildschirme

Aozora Bunko

そりゃおとよの事ゆえ、もちろん人の目に止まるようなことはせぬ。でそういう所に意志を労するだけおとよの苦痛は一層深いことも察せられる。もとより勝ち気な女の持ち前として、おとよがかれこれ言うたから省作は深田にいないと世間から言われてはならぬと、極端に力を入れてそれを気にしていた。それであるから、姉妹もただならぬほど睦まじいおはまがありながら、別後一度も、相思の意を交換した事はない。

表面すこぶる穏やかに見えるおとよも、その心中には一分間の間も、省作の事に苦労の絶ゆることはない。これほどに底深く力強い思いの念力、それがどうして省作に伝わらずにいよう。

省作は何事も敏活にはやらぬ男だ。自分の意志を口に現わすにも行動に現わすにも手間のとれる男だ。思う事があったって、すぐにそれを人に言うような男ではない。それゆえおとよの事については随分考えておっても、それをおはまにすら話さなかった。ことに以前の単純の時代と反対に、自分にはとにかく妻というものができ、一方には元の恋中の女が独身でいて、しかもどうやら自分の様子に注意しているらしく思われる境涯、年若な省作にはあまりに複雑すぎた位置である。