Japanische Klassiker mit Furigana
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のはぎ
野萩
久生 十蘭
Lesen Sie 野萩 (のはぎ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.480 Zeichen · 21 Bildschirme
「伊作がいったことなの、それは?」
「いいえ……でも、あたしには、ちゃんとわかるの」
滋子は肩をひいて、
「よしてちょうだい、へんなことをいうのは……伊作にちっとも似てなんかいないじゃありませんか、眼だって鼻だって……あなた、どうかしているわ」
「父と娘は、後姿が似るというけど、ほんとうね。いま立って行った後姿……肩のぐあい、首、頭の付きまで、伊作にそのままよ……白状するけど、エッフェル塔の下で、あっ、若旦那って頓狂な声をだしたでしょう。あなたは気がつかなかったようだけど、伊作と女のひとが乗った自動車が、すぐ前を通って行ったの………その女のひとってのは、マルセーユで、いろいろ親切にしてくだすった、あの奥さまなのよ」
「たいへんな、めぐりあいね」
安はうなずいて、
「まだ、たいへんなことがあるのよ。杜松さん、その奥さんに瓜二つなの」
幹邦子が、夫の利吉雄を捨てて、誰かと欧羅巴へ駆落ちをしたというたいへんな評判で、新聞社の巴里と倫敦の支局は、本社からの命令で執拗に邦子の足どりを追及した。男と二人で欧羅巴のどこかにいることはたしかだが、所在をつかむことも、相手をつきとめることも、どちらも成功しなかった。