Japanische Klassiker mit Furigana
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きんろう
金狼
久生 十蘭
Lesen Sie 金狼 (きんろう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.438 Zeichen · 179 Bildschirme
……たぶん、これが二人の宿命なのです……〉
しかし、そうだとすれば、めそめそしてはいられない。とにかく久我を逃さなくては。……乾にきかれてしまったから、上高地はもう駄目。……むかしあたしがいた五島列島の福江島……、あそこがいい。
葵は電話室を出て、つかつかと乾のそばまで行くと、藪から棒にいった。
「あたしに、すこしお金を貸してくださらない? すこしばかりでいいんですけど……」
えっ、といって、急に用心深い顔つきをすると、口を尖らして、いった。
「金? あたしに金なんざありませんや、せっかくだけど……」
とりつく島もないようすだった。
「ぽっちりでいいんですの。……どうぞ、……五十円ほどあればいいんですから……」
知らず知らず胸の上で掌を合していた。気がついて顔を赧らめた。
乾は急に横柄なようすになって、
「……たち入ったことをきくようだが、それで……その金でどうしようてんです。いまきいてると上高地へ行くという話だが、その旅費にでもするつもりなのかね」
もう羞かしいもなにもなかった。
「……いいえ、そればかりではないの。おはずかしい話ですけど、もう売るものもなにもない有様なんです。