Japanische Klassiker mit Furigana
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きんろう
金狼
久生 十蘭
Lesen Sie 金狼 (きんろう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.438 Zeichen · 179 Bildschirme
「……つまり、ひがんでるんだねえ。……これが、あたしの悪い病さ。……ひねくれた書記根性ってのは、一朝一夕ではなかなかぬけきらない。……そこへもってきて、五十二年の鰥寡孤独さ。意地悪をするのが楽しみになるのも無理はなかろう。……しかし、まあ、かんべんしてくださいよ。あなたにゃ、まったく、すまないと思ってるんだから……」
二時ごろまで、……時には、こんな風にして、たのしく夜をあかすのだった。
暗い空で稲光りがしていた。久我は、いつものように葵をアパートまで送ってきた。なかへはいろうとする葵を、ちょっと、と、いって呼びもどすと、聴きぐるしいほどどもりながら、いった。
「……葵さん、どうか、僕と結婚してください。(そういうと、逃げるように、すこし身体をひいて)じゃ、おやすみ。……いや、いますぐ返事しないで……、一晩よく考えて、あすのひる、僕のところへやってきて下さい、一緒に食事をしましょう。……(そして、つぶやくような声で)……もし、承知してくれるなら、……手袋をはめてきてくれたまえ。……あの、レースのついたほうを……」
久我と葵は結婚した。
絲満南風太郎の殺人事件は、はしなくも、とうとう一組の幸福な夫婦をつくることになった。