Japanische Klassiker mit Furigana
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きんろう
金狼
久生 十蘭
Lesen Sie 金狼 (きんろう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.438 Zeichen · 179 Bildschirme
西貝、古田、久我、葵、〈那覇〉のボーイ……、絲満事件の参考人や容疑者たちの写真である。
いったい、人間がひとりでいるときは、だれでもふだんとすこし人相が変るものだが、いまの乾の顔は、いつもの卑しい眼尻の皺も、人を喰ったような冷笑もなくして、まるで、ちがうひとのようにみえる。いささか崇高にさえ見えるのである。なにか考えあぐねているらしく、ときどき呻き声のようなものをもらす。ながいあいだそんな風にしていたのち、
「……けっきょく、このなかにはいない、のかも知れん……」
と、呟きながら、古田の写真をとりあげた。古田は軍服を着て、二十人ばかりの輜重自動車隊のまん中で得意そうに腕組みをしていた。
つくづくと眺めたのち、急に顔を顰めると、ずたずたにひき裂いてそれを床の上へ撒きちらした。
階下のどこかで、なにか軽く軋るような音がした……。乾は気がつかぬらしい。こんどは久我の写真をとりあげる。写真の面をていねいに掌で拭うと、その端に書かれた横文字を妙なアクセントで読みあげた。
「ウイズ・ベスト・レスペクト……、最上なる敬意を以て、か……。ふふん、肚のなかじゃひとを小馬鹿にしてるくせに。