Japanische Klassiker mit Furigana
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きんぽうさいき
金鳳釵記
田中 貢太郎
Lesen Sie 金鳳釵記 (きんぽうさいき) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.167 Zeichen · 13 Bildschirme
興哥の好奇心はやがて興娘の方へ往った。おぼろげに覚えている幼顔そのままの興娘の姿が微に思い出された。彼はまた悲しくなってきた。悲しみに捉えられた彼の前には、渓底を見るような微暗い前途が横たわってみえた。俺はこの先どうなるだろう、興娘が歿くなっているのに、いつまでもここに厄介になっていることはできない。身を立てようと思ったところで、それもできるかどうか判らない、俺は何という不幸な男だろうと思った。彼は両手で額を押えて俯向いた。
入口の扉をことことと叩く者があった。興哥は顔をあげた。
「どなた」
しかし、戸外では返事をしなかった。興哥は何人だろうと思って考えた。と、またことことと扉を叩きだした。
「どなたです」
戸外ではまた返事をしなかった。興哥はがてんがゆかなかった。扉がまたことことと鳴った。
「どなたです、お入りなさい」
戸外では依然として返事をしない。興哥は不思議でたまらないので、起って往って扉を開けた。そこには若い綺麗な女が立っていた。興哥は驚いて眼を瞠った。
「あなたはどなたです」
「わたし、慶よ、さっき、肩輿の中から釵を落したのよ、あなた、あれを拾ってくだすって」