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Japanische Klassiker mit Furigana

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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

Lesen Sie 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.874 Zeichen · 20 Bildschirme

Aozora Bunko

鼻の頭を下から擦って勘次は我事のように焦慮していた。

お艶の身元については二つの論があった。ありゃあお前、番町のさる旗本の一のお妾さんだが、殿の乱行を苦に病んでああもお痛わしく気が触れなすったなどと真実しやかに言い立てる者もあれば、何さ、札の辻辺りの煙草屋の看板娘が情夫に瞞されたあげくの果てでげす、世の娘にはいい見せしめでげす、なんかと斜に片付けて納まり返るしったかぶりもあったが、そんな詮議は二の次としても、何からどうして近江屋へこんな因縁をつけるようになったのか、これも狂気の気紛れと断じてしまえばそれまでだが事実近江屋には背めたい筋合は一つもないのだから、狂女の妄念というのほかはないものの、それにしてもこうしつこく立たれては仏の顔も三度まで、第一客足にも障ろうというもの――海老床の腰高障子へ隠居が蝦の跳ねている図を絵いてから、合点長屋と近江屋とは髪結甚八を通して相当昵懇の仲、そこで近江屋から使者が立って、藤吉親分へ事を分けての願掛けとなった次第、頼まれなくてもここは一つ釘抜の出幕だ、親分さっそく、

「ようがす。ほまちに白眼んどきやしょう。」

と大きく頷首いて、お艶を始め因業家主の身辺には、それからひとしお黒い影がつきまとうこととなったのである。