Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎんさんじゅうまい
銀三十枚
国枝 史郎
Lesen Sie 銀三十枚 (ぎんさんじゅうまい) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 35.863 Zeichen · 73 Bildschirme
「……で、貴女は?」と私は訊いた。
自動車の帰って行く音がした。
「はい、妾、小間使で」
私はヌッと玄関を上った。
「うん。ところで山神は?」
直ぐ左手に応接間があった。その扉が開いていた。それは洋風の応接間であった。
「あの、お寝みでございます」
「伯爵夫人はお寝みか」
私は応接間へ入って行った。
一つの力に引き入れられたのであった。
その応接間には見覚えがあった。
佐伯準一郎氏の応接間であった。
18
爾来私達はその家に住んだ。
彼女は依然として出歩いた。あたかもそれが日課のように。
彼女は入念にお化粧をした。あたかもそれが日課のように。
毎朝牛乳で顔を洗った。
とりわけ爪の手入れをした。これにはもっともの理由があった。他がどんなに綺麗でも、爪に一点の斑点があったら、貴族の婦人とは見えないからであった。
彼女は耳髱に注意した。耳髱はいつもピンク色であった。それが彼女を若々しく見せた。
彼女は踵に注意した。いつも円さと滑らかさと、花弁の色とを保っていた。
耳の穴、鼻の穴に注意した。
だが顔色は蒼白かった。それも彼女の好嗜からであった。血色のよい赦ら顔は、田舎者に間違えられる恐れがあった。