Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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どうせんかいじへん

銅銭会事変 短編

国枝 史郎

Lesen Sie 銅銭会事変 短編 (どうせんかいじへん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.745 Zeichen · 216 Bildschirme

Aozora Bunko

「へいへいこれはお色さん」

「これをね」とお色は恋文を出した。「いつもの方の所へね。……これが駕籠賃、これが使い賃、これが向こうのお屋敷の、若党さんへの心付け」

「これはこれはいつもながら。……お気の付くことでございます。……そこで益※(二の字点、1-2-22)ご繁昌」

「冗をいわずと早くおいでな」

喜介は門を飛び出した。お色は両国を渡って行った。「春の海終日のたりのたり哉」……「海」を「河」に置き代えよう。「春の河終日のたりのたり哉」まさに隅田がそうであった。おりから水は上げ潮で河幅一杯に満々と、妊婦の腹のように膨れていた。荷足、帆船、櫂小船、水の面にちらばっていた。両岸の家並が水に映り、そこだけ影がついていた。

「いい景色、嬉しいわね」お色は恍惚と河を見た。「まるでお湯のように見えるじゃあないの」――嬉しい時には何も彼も、水さえ湯のように見えるものであった。「おや都鳥が浮いているよ。可愛いわねえ、有難うよ」またお色は礼をいった。嬉しい時には有難く、有難い時には礼をいう。これは大変自然であった。そこでお色は橋を越した。まだ広小路は午前のことであんまり人が出ていなかった。