Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にしきぎ

錦木

宮本 百合子

Lesen Sie 錦木 (にしきぎ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.481 Zeichen · 103 Bildschirme

Aozora Bunko

心は段々と落ついて来た。それと一所に泣くよりも強い悲しみが胸をおそって来た。もう涙も出ない、光君の心は悲しみのかたまりになってしまった。

「私はもう二度とこの部屋に来ることはないだろう」

「オオなつかしいこの文机、なつかしいこの衣こう、左様なら、若しお前に心があるならそう云って御呉れ、『私は彼の人のうつり香のする部屋で死にたいけれ共それはどうせゆるして下さるまい。私はこの貴女の残して行った衣を貴女と思って抱いて死ぬ、せめての心やりに』とね。そう云って居たと云って御呉れ、さらば――とこしえに」

若者の姿は障子のそとにきえて机の前の女君の衣もなかった。

(十一)

随分歩いた、随分久しい間歩きつづけた。それでもまだ光君の部屋へはつかない。それに路は大変ひどくて急な坂や、深い淵がある。光君は急な流の水に女君の衣の裾をぬらすまいとし、多く出た木の枝では美くしい衣にほころびを作らない様にして歩いた。大変つかれてもう歩くことが出来ない程に思われた、下は大変にかたい岩であるけれども我慢が出来なくてその岩の上に腰を下ろした。大変につめたいのでビックリするといっしょに光君の心は夢からさめた様にハッキリした、妙だと思ってあたりを見ると深い山でも恐ろしい川辺でもない、自分は西の対の廊に腰を下ろして居る。