Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うし

鎧櫃の血

岡本 綺堂

Lesen Sie 鎧櫃の血 (うし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 48.702 Zeichen · 99 Bildschirme

Aozora Bunko

さしている脇指を抜いた。

「ああ、もし、お待ちください……。」

声をかけたのは立派な商人ふうの男で、若い奉公人を連れていた。しかもその声が少し遅かったので、留める途端に弥三郎の刃はもう鯉の首に触れていた。それでも呼ばれて振返った。

「和泉屋か。なぜ留める。」

「それほどの物をむざむざお料理はあまりに殺生でござります。」

「なに、殺生だ。」

「きょうはわたくしの志す仏の命日でござります。どうぞわたくしに免じて放生会をなにぶんお願い申します。」

和泉屋は蔵前の札差で、主人の三右衛門がここへ通りあわせて、鯉の命乞いに出たという次第。桃井の屋敷は和泉屋によほどの前借がある。その主人がこうして頼むのを、弥三郎も無下に刎ねつけるわけには行かなかった。そればかりでなく、如才のない三右衛門は小判一枚をそっと弥三郎の袂に入れた。一朱の鯉が忽ち一両に変ったのであるから、弥三郎は内心大よろこびで承知した。

しかし鯉は最初の一突きで首のあたりを斬られていた。強いさかなであるから、このくらいの傷で落ちるようなこともあるまいと、三右衛門は奉公人に指図してほかへ運ばせた。

ここまで話して来て、梶田老人は一息ついた。