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Japanische Klassiker mit Furigana

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うし

鎧櫃の血

岡本 綺堂

Lesen Sie 鎧櫃の血 (うし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 48.702 Zeichen · 99 Bildschirme

Aozora Bunko

治三郎はその当時廿八歳で、妻のお貞は廿三歳、夫婦のあいだにお秋という今年四歳になる娘があった。慶応四年――それがいかなる年であるかは今更説明するまでもあるまい。石原治三郎が四谷の屋敷を出て、上野の彰義隊に加わったのは、その年の四月中旬であった。

彰義隊らとは成るべく衝突を避けて、無事に鎮撫解散させるのが薩長側の方針であったから、直ぐには攻めかかって来ない。彰義隊士も一方には防禦の準備をしながら、そのあいだには徒然に苦しんで市中を徘徊するのもある。芝居や寄席などに行くのもある。吉原などに入り込むのもある。しかも自分の屋敷へ立寄るものは殆どなかった。殊に石原の家では、主人が家を出ると共に、妻子は女中を連れて上総の知行所へ引っ込んでしまって、その跡はあき屋敷になっていたので、もう帰るべき家もなかった。

五月二日は治三郎の父の祥月命日である。この時節、もちろん仏事などを営んでいるべきではないが、せめてはこうして生きている以上、墓参だけでもして置こうと思い立って、治三郎はその日の朝から上野の山を出た。菩提寺は小石川の指ヶ谷町にあるので、型のごとくに参詣を済ませ、寺にも幾らかの供養料を納め、あわせて自分が亡きあとの回向をも頼んで帰った。