Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うし

鎧櫃の血

岡本 綺堂

Lesen Sie 鎧櫃の血 (うし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 48.702 Zeichen · 99 Bildschirme

Aozora Bunko

かの農家の横手には可なり広いあき地があって、そこに大きい物置小屋がある。あの小屋に忍んで一夜を明かそう。あしたになれば雨も止むであろう。捜索の手もゆるむであろう。自分の疲労も完全に回復するであろう。その上で奥州方面にむかって落ちてゆく。差しあたりそれが最も安全の道であろうと思った。

治三郎は又引っ返した。雨にまぎれて足音をぬすんで、かの農家の横手にまわって、型ばかりの低い粗い垣根を乗り越えて、物置小屋へ忍び込んだ。雨の日はもう暮れかかっているのと、母屋は厳重に戸を閉め切っているのとで、誰も気のつく者はないらしかった。

薄暗いのでよく判らないが、小屋のうちには農具や、がらくた道具や、何かの俵のような物が積み込んであった。それでも身を容れる余地は十分にあるので、治三郎は荒むしろ二、三枚をひき出して土間に敷いて、疲れたからだを横たえた。さっきまでは折おりにきこえた鉄砲の音ももう止んだ。そこらの田では蛙がそうぞうしく啼いていた。

雨の音、蛙の音、それを聴きながら寝ころんでいるうちに、治三郎はいつしかうとうとと眠ってしまった。その間に幾たびかお七の鶏の夢をみた。