Japanische Klassiker mit Furigana
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かがみのなかのつき
鏡の中の月
宮本 百合子
Lesen Sie 鏡の中の月 (かがみのなかのつき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.290 Zeichen · 15 Bildschirme
夕立がすくないきびしい残暑がつづいた。息苦しいほど白く燃え乾いた午後の空気をゆすぶって、駅の方から汗まびれになった頸に筋を浮上らせて気が遠くなるように絶叫されるバンザーイの声々が響いて来る。その声々をのせて吹いて来る風は村なかの青桐の茂った梢にあたって、そこではもう秋めいた葉ずれの音を立てているのである。
瀧子は、昼顔の花の咲いている四つ目垣のところへ張板をよせかけ、袷の赤い裏地をはっていた。近頃こうして一日うちにいられることは珍しい。いそいそとした気分で働いていると、玉蜀黍畑の蔭の近路を突ッきって、茶色と緑の縞の日傘がこっちに向って来るのが目に入った。その路は、停車場の柵沿いにすぐ畑へぬけている瀧子のすきな草深い小道である。手をとめてそっちを見ていると、暫く来て日傘がもちあげられた。その下から現れたのは、ゆき子の顔であった。庭から劈って来たらしい花をハトロン紙で包んで手にもっている。ゆき子は、井戸端の小さい草堤を、親しさをあらわした大業さで、やっこら、とまたぎのぼり、
「おおかたこんなことだろうと思って、お八つをこしらえて来たわ」
メリンス風呂敷の小重箱をさし出した。