Japanische Klassiker mit Furigana
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くにさだえがく
鏡花短篇集 川村二郎編
泉 鏡花
Lesen Sie 鏡花短篇集 川村二郎編 (くにさだえがく) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.644 Zeichen · 40 Bildschirme
ここで桐の箱も可懐しそうに抱しめるように持って出て、指蓋を、すっと引くと、吉野紙の霞の中に、お雛様とお雛様が、紅梅白梅の面影に、ほんのりと出て、口許に莞爾とし給う。唯見て、嬉しそうに膝に据えて、熟と視ながら、黄金の冠は紫紐、玉の簪の朱の紐を結い参らす時の、あの、若い母のその時の、面影が忘れられない。
そんなら孝行をすれば可いのに――
鼠の番でもする事か。唯台所で音のする、煎豆の香に小鼻を怒らせ、牡丹の有平糖を狙う事、毒のある胡蝶に似たりで、立姿の官女が捧げた長柄を抜いては叱られる、お囃子の侍烏帽子をコツンと突いて、また叱られる。
ここに、小さな唐草蒔絵の車があった。おなじ蒔絵の台を離して、轅をそのままに、後から押すと、少し軋んで毛氈の上を辷る。それが咲乱れた桜の枝を伝うようで、また、紅の霞の浪を漕ぐような。……そして、少しその軋む音は、幽に、キリリ、と一種の微妙なる音楽であった。仲よしの小鳥が嘴を接す時、歯の生際の嬰児が、軽焼をカリリと噛む時、耳を澄すと、ふとこんな音がするかと思う、――話は違うが、(ろうたけたるもの)として、(色白き児の苺くいたる)枕の草紙は憎い事を言った。