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Japanische Klassiker mit Furigana

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に、さんば――じゅうに、さんば

鏡花短篇集

泉 鏡花

Lesen Sie 鏡花短篇集 (に、さんば――じゅうに、さんば) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.305 Zeichen · 66 Bildschirme

Aozora Bunko

後に考えてこそ、翌朝なんですが、その節は、夜を何処で明かしたか分らないほどですから、小児は晩方だと思いました。この医王山の頂に、真白な月が出ていたから。

しかし残月であったんです。何為かというにその日の正午頃、ずっと上流の怪しげな渡を、綱に掴まって、宙へ釣されるようにして渡った時は、顔が赫とする晃々と烈い日当。

こういうと、何だか明方だか晩方だか、まるで夢のように聞えるけれども、渡を渡ったには全く渡ったですよ。

山路は一日がかりと覚悟をして、今度来るには麓で一泊したですが、昨日丁度前の時と同一時刻、正午頃です。岩も水も真白な日当の中を、あの渡を渡って見ると、二十年の昔に変らず、船着の岩も、船出の松も、確に覚えがありました。

しかし九歳で越した折は、爺さんの船頭がいて船を扱いましたっけ。

昨日は唯綱を手繰って、一人で越したです。乗合も何もない。

御存じの烈しい流で、棹の立つ瀬はないですから、綱は二条、染物をしんし張にしたように隙間なく手懸が出来ている。船は小さし、胴の間へ突立って、釣下って、互違に手を掛けて、川幅三十間ばかりを小半時、幾度もはっと思っちゃ、危さに自然に目を塞ぐ。