Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かがみもち

鏡餅

宮本 百合子

Lesen Sie 鏡餅 (かがみもち) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.163 Zeichen · 15 Bildschirme

Aozora Bunko

普通のまちまちの形をした猪口が三つばかりあった。サエが、

「私につがして」

そう云って屠蘇を入れた瀬戸物の銚子をとりあげた。

「おばあちゃん、そこんところへ結びつける蝶々みたいなもの、どこかにありましたね」

「さあ、……どこじゃか……あったねえ」

だが、おばあさんもそんなことには大してかかわらず、猪口を両手にとって改った顔つきになりサエの方へ向いた。サエは何年ぶりかでお正月の屠蘇というものの酌をした。皆黙ってサエの手元に目をあつめた。屠蘇が猪口に一杯になり、おばあさんがそれを丁寧に一口すすって、

「マア、美味いわ」

と、若々しい声をあげると、急に陽気にざわめき立って、笑った。

坐っている順に屠蘇をのんだ。

「去年のお正月は淋しかったねえ」

まさがしみじみと云った。すると佐太郎が、

「大体、こんなことするの、われわれだってはじめてぐらいのもんじゃないか」

「そりゃ、そうだけれど……」

サエは、銚子をチャブ台の上におきながらどこか熱っぽい輝きのある目つきをして、まさに、

「私うれしいわ、ここで賑やかにこんなことがやれたから――」

と云った。

「専吉さんがつかまったりして、わたしは、なおじゃんじゃんお正月でもしてやりたい気持でしょ? だのに、うちったら門松もないんだもの、癪だった……」