Japanische Klassiker mit Furigana
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ながさきのいんしょう
長崎の印象
宮本 百合子
Lesen Sie 長崎の印象 (ながさきのいんしょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.996 Zeichen · 28 Bildschirme
去年、始めて私は観たのだが、彼処はよかった。全くよかった。ちょうど今より数日遅いやはり晩春であったが、山門の左右の聯の懸った窟門から、前庭の松花を眺めた気持。多分天王殿の左翼からであったろう。竹林の蔭をゆるやかな傾斜で蜒々と荒れるに任されていた甃廻廊の閑寂な印象。境内一帯に、簡素な雄勁な、同時に気品ある明るさというようなものが充満していた。建物と建物とを繋いだ直線の快適な落付きと、松葉の薫がいつとはなししみこんだような木地のままの太い木材から来る感銘とが、与って力あるのだ。
黄檗の建物としてはどちらが純正なものなのか。或は唯造営者の気稟の相異だけでこうも違うのか。私共は解答者を得ない疑問を持ち合ったまま、再び山門を出た。唐門の剥落した朱の腰羽目に、墨でゴシック風の十字架の落書がしてあった。木庵の書、苑道生の十八羅漢の像などを蔵しているらしいが時間がおそくそれ等は見ず。
片側には仏具を商う店舗、右は寺々の高い石垣、その石垣を覆うて一面こまかい蔦が密生している。狭い特色ある裏町をずっと興福寺の方へ行って見た。もう夕頃で、どの寺の門扉も鎖されている。ところどころ、左右から相逼る寺領の白い築地の間に、やっと人一人通れる位の壊れた石段道が、樟の若葉からしたたる夕闇がくれ、爪先のぼりに風頭山へ消えているのが眺められ