Japanische Klassiker mit Furigana
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ちょうじゃ
長者
田中 貢太郎
Lesen Sie 長者 (ちょうじゃ) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.532 Zeichen · 5 Bildschirme
何時の比であったか、四国の吉野川の辺に四国三郎貞時と云う長者が住んでた。其の長者の家では日々奴隷を海と山に入れて、海の宝、山の宝を集め執らしたので、倉と云う倉には金銀財宝が満ち溢れていたが、人には爪のさきほども施してやる心がなかった。しかし、こうした貪慾の男でも、我が子は非常に可愛がって、小児のこととなるとどんなに無益な費をしてもいとわなかった。
長者には八人の子があった。某日其の長者の家へ、穢い容をした旅僧が錫杖を鳴らしながら来て手にした鉄鉢をさし出して、
「御報謝を願います」
と云った。庭前で小児の対手になって遊んでいた長者は、之を見ると、
「ならん、帰れ」
と云って叱りつけた。旅僧は静に出て往った。しばらくすると又錫杖の音をさして引返して来て、
「御報謝を願います」と云って立った。
長者は五つ位になる下の女の子を抱きあげたところであった。之を見ると急いで女の子をおろし、未だ両の袖にも縋っている男の子の手も除けて置いて旅僧の傍へ往って、「帰れと云ってあるに何故またやって来た、俺はお前達に報謝する因縁がない、帰れ」と云って叱った。
旅僧は小児小児した柔和な眼で、脂ぎった長者の顔を一眼じっと見た後に、黙って戸外へ出て往った。