Japanische Klassiker mit Furigana
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ちょうじゃ
長者
田中 貢太郎
Lesen Sie 長者 (ちょうじゃ) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.532 Zeichen · 5 Bildschirme
「煩い坊主じゃ、なんだって二度もやって来るだろう、煩く云っていたらくれるとでもおもってるだろうか、ふン」
長者は忌いましそうに呟きながら、小児の方へ歩いて往ってまた其の対手になっていた。と、また何処からともなく錫杖の音がして、初めの旅僧がひょっこり入って来た。長者は之を見るとむらむらと怒が燃え立った。絡わりついて来る小児を突き除けるようにして、旅僧の傍へ進んで往った。
旅僧は柔和な眼をして鉄鉢をさし出しながら、
「どうか御報謝を願います」
「此の盲目坊主、おんなじ家が判らないのか、お前はぜんたい、何のためにそんなことをしておるのじゃ」
「私は衆生済度のためにこんなことをしております」
「人に物を貰うに、何が衆生済度じゃ、それよりゃ、俺がお前を済度してやろう」
長者はこう云うが早いか、旅僧の持っている鉄鉢を引ったくって、傍にある石の上に投げつけたので、鉢は音を立てて八つに砕けて空に飛び散った。と、今まで明るい陽がさしていた空が不意に暗くなって、真黒な雲が渦巻のように舞いさがって来て、空中に浮んだ鉢の破片を包んで空高く騰って往った。長者は茫然として其の様を見ていたが、ふと気が注いて見ると、旅僧の姿はもうなかった。