Japanische Klassiker mit Furigana
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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lesen Sie 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.414 Zeichen · 289 Bildschirme
一人ではなく二人の跫音らしいと耳をすます間もなく、唐紙があいて、
「あら布団もしかないで。さア。」と母は長火鉢の向に坐りすぐ茶を入れようとします。わたしは「お久ぶり」とも言えず、何といって挨拶していいのかちょっと言う言葉に困って、
「おいそがしいの。」といいました。よく仲間同士で挨拶のかわりに使う言葉です。ここでこんな事をいうのは、後で考えると実に滑稽です。母はそれを何と聞いたのか、別に気まりのわるい顔もせず、
「お客じゃないの。紹介しなければならない人だから。」
「母さんの彼氏……。」
その時四十前後の男の人が唐紙の間から顔を出して、
「いらッしゃい。去年の暮から随分方々をたずねたんですよ。知れない時はいくら尋ねても知れないもんです。」と言いながら母のそばに坐りました。わたくしは友達のつゆ子から聞いて名前まで知っていましたから、改めて挨拶もせず、
「つい近処にいながら、不思議ですねえ。」といって笑いました。
「つゆ子さんとは始終一緒でしたか。」と彼氏がききます。わたくしは初め新宿のホールでつゆ子と友達になり同じ貸間にいた事や、それから同じ時につかまってダンサアの許可証を取り上げられて、市内ではどこのホールにも出られなくなったので、五反田の円宿のマスターに紹介してもらって、この方面へ転じたはなしをしました。