Japanische Klassiker mit Furigana
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あめ
雨
織田 作之助
Lesen Sie 雨 (あめ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.261 Zeichen · 44 Bildschirme
火の気を消してしまった火鉢の上に手をかざし、張子の虎のように抜衣紋した白い首をぬっと突き出して、じじむさい恰好で坐っているところを、豹一は立たされ、人力車に乗せられた。見知らぬ人が前の車に、母はその次に、豹一はいちばん後の車。一人前の車の上にちょこんと収っている姿をひねてると思ったか、車夫は、
「坊ん坊ん、落ちんようにしっかり掴まってなはれや」
その声に母はちらりと振り向いた。もう日が暮れていた。
「落てへんわい」
と、豹一はわざとふざけた声で言い、その声が暗闇の中に消えて行くのをしんみり聴いた。ふわりと体が浮いて、人力車は走りだした。だんだん暗さが増した。
ひっそりとした寺がいくつも並んだ寺町を通るとき、木犀の匂いがした。豹一は眩暈がし、一つにはもう人力車に酔うていたのだ。梶棒の先につけた提灯の光が車夫の手の静脈を太く浮び上らしていた。尋常二年の眼で提灯に書かれた「野瀬」の二字を判読しようとしていたが、頭の血がすうすう引いて行くような胸苦しさで、困難だった。その夜一人で寝た。
蒲団についたナフタリンの匂いが母親のいない淋しさをしみじみ感じさせ、泣くまいとこらえる努力でよけい涙が出た。