Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆきとどろ
雪と泥
山本 周五郎
Lesen Sie 雪と泥 (ゆきとどろ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.993 Zeichen · 40 Bildschirme
おしのは折之助に酌をし、やがて自分でも盃を持った。
ひどく当惑しながら、折之助はすすめられるままに盃を重ねた。おしのはいつもより際立って美しくみえた。紫色の地に菊の模様を散らした小袖が、色の白い顔によく似合い、少し衣紋をぬいた衿足の、なめらかに脂肪を包んだ肌が、吸いつきたいほど嬌めかしく思えた。――その座敷は中庭に面した六帖で、片方は襖で隣りの四帖半に続き、片方は丸窓になっていた。廊下のほうの障子をあければ、廻り縁の向うに狭い中庭の植込があり、その先には、やはり同じような茶屋の板塀が立っていた。
「初めて此処へ来たときは、山茶花が咲いていましたわね」おしのが云った、「ちょうど咲きさかりのようでしたけれど、もうすっかり終ってしまいましたわ」
「そうかしらん、三日に一度ずつ、――今日で六度しか逢っていないがね」
「それでももう十六日めですわ」おしのはふと声をひそめた、「ほんとうにふしぎな気持ですわ、生れないまえからお逢いしているようでもあるし、――昨日おめにかかったばかりで、お顔もよく覚えられないようでもあるし、あたし、自分で自分がわからなくなりましたわ」