Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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らいほうとうものがたり

雷峯塔物語

田中 貢太郎

Lesen Sie 雷峯塔物語 (らいほうとうものがたり) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.606 Zeichen · 45 Bildschirme

Aozora Bunko

「あのね、なんですが」

小婢の顔が此方を見た。許宣は何事だろうと思った。

「今朝、家を出る時に、急いだものですから、お銭を忘れてまいりました、誠に恐れ入りますが、どうか船賃を拝借させていただきとうございますが、家へ帰りましたなら、すぐお返しいたしますが」

「そんなことはいいのですよ、私が払いますから」

舟はもう水際へ著いていた。女はきまりわるそうにもじもじしていた。

「さあ舟が著きました、あがりましょう」

許宣は腰につけた銭袋からいくらかの銭を取って舟の上に置いた。

「どうもすみません」

女はそう言って鞋を穿いて小婢といっしょにあがって往った。許宣もその後からあがったが、それは赤脚のままであった。

もう日没になっているのか四辺が灰色になって見えた。女は許宣のあがってくるのを楊柳の陰で待っていた。

「あの、なんですけど、雨もこんなに降りますし、もう日も暮れかけましたから、私の家へまいりましょうじゃありませんか、拝借したお銭もお払いしとうございますから」

許宣は女の家へも往きたかったが、姐の家に気がねがあるので往けなかった。

「もう遅うございますから、またこの次に伺います」