Japanische Klassiker mit Furigana
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きりのなか
霧の中
豊島 与志雄
Lesen Sie 霧の中 (きりのなか) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.920 Zeichen · 40 Bildschirme
」
「なぜだい。」
「そんなの、高いとこから落っこちる時、わあっと声をたてるようなもんじゃないか。」
「ちがうよ。」
「喧嘩して、相手を押えつけて、殴りつけながら、わあわあ声をたてるようなもんじゃないか。」
「ちがうよ。」
「そうかなあ。僕は一度も泣いたことなんかないから、分らないが……。」
「君はばかだからさ。」
「どうして?」
「ばかな奴は泣かないよ。」
「豪い奴が泣かないのさ。」
「豪い奴だって泣くよ。泣かないのは、ばかかひねこびれてる奴だけだ。」
チビは耳をかいて、目をぱちくりやった。正夫は得意になった。
「誰だって泣くさ。ただ、めったに本当に泣かないだけだ。君が云うように、涙ぐんでくよくよするのなら、女の児だって婆さんだって、しじゅうやってるよ。」
「しじゅうにこにこしてるよ。」
「そしてへんな時に、思いがけない時に、何でもない時に、しくしく泣きだすんだ。そしてひどいのになると……。」
正夫の東京の家の近くに、境内がのんびりと広い神社があって、その仁王門にたくさんの鳩が巣くっていた。よく人に馴れていて、掌の中の豆までつっつくのだった。幼児を背負った娘や子供の手を引いた婆さんなどが、そこの広場に幾人も見えた。