Japanische Klassiker mit Furigana
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ひじょうのあい
非情の愛
豊島 与志雄
Lesen Sie 非情の愛 (ひじょうのあい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.831 Zeichen · 24 Bildschirme
その顔立ははっきり分らないが、確かに誰か人の顔なのである。彼女は夜灯をつけず真暗な中に寝る習慣だったが、真暗な中にありありと、その人の顔だけは分り、それが消えてしまったあとの暗闇は、いっそう恐ろしかった。後にはそれが毎夜のようになって、おちおち眠られず、次第に心気が衰えてきた。
主人の西浦辰吉夫妻も、美春のことを心配しだした。そして辰吉の懇意な者に、照顕さまを信仰してるのがいて、一度ためしに祈祷して貰ったらどうかと勧めた。照顕さまというのは、新しく出現したもので、祈祷の秘義は仏教に依るものらしく、本体は神霊らしいが、そこのところは神秘の奥に閉ざされている。戦争後たいへん信者がふえ、霊験あらたかだとのことだった。その照顕さまに、辰吉は頼むことになった。そして祈祷をして貰ったところが、美春は蛭の本体を現わしたそうで、それを祓い落してもらってから、彼女の夜の悩みは遠のいたらしい。
西浦夫妻は照顕さまの信者になった。そして美春はまだすっかり恢復していないので、なお一回の祈祷が行われ、更にもう一回行われることになったのである。
西浦の妻が時折、蛭に欝血を吸わせているから、美春が蛭の本体を現わしたのも不思議ではないと、大田梧郎は簡単に解釈した。