Japanische Klassiker mit Furigana
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かばんのかい
革鞄の怪
泉 鏡花
Lesen Sie 革鞄の怪 (かばんのかい) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.394 Zeichen · 21 Bildschirme
「旦那、この革鞄だけ持って出ますでな。」
「いいえ、貴方。」
判然した優しい含声で、屹と留めた女が、八ツ口に手を掛ける、と口を添えて、袖着の糸をきりきりと裂いた、籠めたる心に揺めく黒髪、島田は、黄金の高彫した、輝く斧のごとくに見えた。
紫の襲の片袖、紋清らかに革鞄に落ちて、膚を裂いたか、女の片身に、颯と流るる襦袢の緋鹿子。
プラットフォームで、真黒に、うようよと多人数に取巻かれた中に、すっくと立って、山が彩る、目瞼の紅梅。黄金を溶す炎のごとき妙義山の錦葉に対して、ハッと燃え立つ緋の片袖。二の腕に颯と飜えって、雪なす小手を翳しながら、黒煙の下になり行く汽車を遥に見送った。
百合若の矢のあとも、そのかがみよ、と見返る窓に、私は急に胸迫ってなぜか思わず落涙した。
つかつかと進んで、驚いた技手の手を取って握手したのである。
そこで知己になった。
大正三(一九一四)年二月