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Japanische Klassiker mit Furigana

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かばんらしくないかばん

鞄らしくない鞄

海野 十三

Lesen Sie 鞄らしくない鞄 (かばんらしくないかばん) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.653 Zeichen · 73 Bildschirme

Aozora Bunko

それはなんだか俄にトランクの中へ或る重い物が入ったように感じたのである。そこで彼は念のためトランクをゴム靴を並べてあるその上に置くと、トランクの懸金をひらいて開けてみた。が、トランクの中には何も入っていなかった。全くからっぼであったのだ。

彼は拳固をこしらえると自分の頭をごつんと一撃してからそのトランクの口を閉めて再び店の一隅へ並べた。

しばらくは何事もなかった。

ところがそれから二三十分経ったと思われる後のこと、例のトランクは再び、のそのそと店から外へ匐い出していったのである。店員はそれを見て知っていた。そのトランクを後から抱き停めなければ損をする虞れがあるという気持と、気味がわるくて手が出せないという気持が、彼の心の中で闘いを始めた。そのうちに鞄は往来へ飛び出し、彼の眼界から失せた。そこで彼の心の中に怫然と損得観念が勝利を占め、彼はゴム靴の海を一またぎで躍り越えて往来へ飛び出した。そのとき彼はなぜか声が出なかったそうである。大声で叫んで人々を集めればよろしかったのにも拘らず、なぜか無言のままだった。それは多分、そのとき軽率に叫び声をあげて人々にこの事件を知らせたが最後、結局は彼自身の頭が変になっていたんだなどと後に指摘されることになってはいやだと思ったらしいのである。